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「『特級』に・・・？」 『警察庁』と『法廷』の合同会議場に異様な空気が張り詰めた。 「一刻も早い処理が必要であると『法廷』は考えます」 透き通った緑の瞳、いかなる感情も認められない無表情。『警察庁』側の出席者はキャリアばかりではなく、捜査官として経験を積んだものも数名出席していたが、その彼らですら真似の出来ないほどの完璧な無表情。 「しかし、キネが『高級』へランキングされてから、まだ十日しか経っていません」 「日数の問題ではありません。彼の手口は恐ろしく残虐です。もし万一、アルファ・ゾーンへ移界されてしまえば、犠牲者はますます増える一方です」 「し・・・しかし」 教え子と一般市民を身を挺して守り、惨殺された研修教官を、『警察庁』は全ての威信をかけて追っていた。彼の遺品を本部に安置し、昼夜を分かたない異例の大捜査網を繰り広げていたが、凶行から十日経った今も犯人の行方を掴みきることが出来ないでいた。 「だが、まだ『ガーディアン』機構も成立したばかりだ」 『警察庁』側の出席者から鋭い声が上がった。 「あ、揚羽くん」 「どの程度機能するかわからないシステムに全てを委ねることはできない」 「『トレーサー』にはボロール・キネを処理することはできません」 人事担当官と治安『判事』の鋭い睨み合い。・・・いや、睨んでいるのはあくまでも人事担当官であり、治安『判事』は冷徹な無表情を崩しては居ない。 「『トレーサー』を見くびるな！」 「あなた方こそ、『ガーディアン』を見くびらないでいただきたい」 治安『判事』、翡翠の口に浮かんだ微笑。 ------こいつ、本当にあの翡翠か------ 揚羽は内心、心臓を冷たい手で握られたような気分に陥っていた。 まるで人が変わってしまった。法律大学に居た頃も、さして表情の種類が豊富だとはいえなかったが、それでもまだ「人間らしさ」は残っていたはずだ。それが、・・・・・ こんな笑いを、人間が笑えるのか？ 「彼らは殺すために生きている。捕らえるためではない」 「・・・っ」 ボロール・キネ、弐群三八八事件の犯人として『ガーディアン』機構制定日に即日『特級』ランキング、同日処刑完了。 |