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入庁査問、研修ともトップの成績で『法廷』入りした期待の新人『判事』は、自ら望んで治安『判事』への道を進んだ。まともな人間なら、誰しも避けたい道である。事実、前任の『判事』は殆ど降格に近い形での異動で治安『判事』となった。 「君は変わっているね。何故治安『法廷』入りを望んだのかね」 誰もが翡翠にそう言った。 翡翠はそう問われるたびに、黙って微笑んだ。 「・・・翡翠」 『警察庁』との合同会議を終えて退出しようとした翡翠を呼び止めたのは、巡察監理官の制服を着た女性だった。 「揚羽・・・久しぶりだね」 「お前、『法廷』に入ったんじゃなかったのか」 「そうだよ」 『判事』の法服は、治安『判事』も『大判事』も全く変わりがない。ただ、所属が違うだけだ。巡察官や監理官のように、一目でわかる徽章や所属胸章をつけていないだけのことだ。 「じゃあ、どうして法服を着ている？」 通常、『法廷』入りした新人は、補佐官として『判事』につき、仕事を覚えていく。彼らの制服は『判事』のものとははっきりと違うために、外部の人間からも見分けがつくのだ。 「どうしてって・・・『判事』として任官したからだよ」 「いくらお前だっていきなり『判事』になんか・・・」 揚羽はぴくりと眉を上げた。 「・・・治安『判事』か」 「そう」 「何故だ」 噛み付くような揚羽の声に、翡翠は苦笑した。今まで散々翡翠が浴びせられたものと同じような台詞でも、揚羽のものはまるで違った。 「自棄でも起こしたか？狭綾が死んだのはお前のせいじゃないだろう！」 「・・・違うよ」 「何が違う？」 揚羽は------法律大学の同窓生は、翡翠のことをよく知っている。恋愛感情などお互いに全く持っていなかったからこそ、お互いのことをまるで自分のことのように理解できる。狭綾が生きていた頃は、「どうして揚羽が恋人の私よりよくわかるのよ」とよく拗ねてみせていたものだった。 「自棄を起こしたわけじゃないし、狭綾が死んだのは僕のせいだ」 「・・・つまり最悪の結果というわけか？」 「狭綾が生きていたとしても・・・」 そんな仮定に一体何の意味があるのだろう。 翡翠は一瞬言葉を止めたが、すぐに続きを吐き出した。 「僕は治安『判事』になりたかったんだ」 「何故？お前が治安『判事』になったところで、一体何が出来るというんだ？」 それこそが、まさに、翡翠の存在意義とすら言えるものだった。 「・・・お前、気は確かか？」 『氷の女』の異名を取る揚羽ですら、色を失うもの。 それは、 「『ガーディアン』プロジェクトを発動させる」 |