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見えるときと見えないときがあるものはなーんだ？ 答えは「権力」。 「権力」と口で言ってもそれがどこにあるのか見えないけれど、明らかに、誰から見てもはっきりと存在が見えるときもある。 答えは「影響力」。 答えは「力」に関係あるのかもしれない。他にももっともっと、あるのかもしれない。 「何だか街の様子が変だと思わない？」 「べつにー」 光は紅茶を啜った。酒でもタバコでも何でも嗜んでいた光だが（もちろん今ではもう止めている）、熱いものだけは駄目なのだそうな。いつまでも熱そうに息を吹きかけてはちびりちびりと呑んでいる。 「おかしな事件がおきたって話も聞かないけど？」 「起きる余地がないって言うのよ、そういう時は」 光は肩を竦めた。 「んで、今日は何さ？言っとくけどオヤジは居ないよ」 「見ればわかるわよ」 涼子の言い草はなかなか失礼だった。事務所兼居間に姿がないからといって留守にしていると決め付けるのはいかがなものか。もしかしたら寝室にいるのかもしれないではないか。こんな狭い事務所兼居間しか部屋がないほど、この家は狭くもない。 「さっき会ったわ」 「さようでございますか」 「遊びにくくなったってぼやいてたわ」 「とーちゃんには関係ないのに」 「そうね」 光は涼子に引っ掛けられたことを知って一瞬むっと眉を寄せたが、すぐに思い直したように機嫌を直した。 「で？」 「どうだったの？」 「・・・あのさ、リョーコさん」 「こっちだって調べてるわよ。何もせずに君たちに頼ってるわけじゃないわ」 「はいはい。・・・やっぱり俺の言ったとおりだったよ。俺の知ってるやつらじゃなかった」 「もうわかったの？あれからまだ三日しか経ってないじゃないの」 「じゃあ何でここに来たのさ？」 「・・・そうね」 涼子は悪びれもせずに微笑んで見せた。 「タチ悪いって言われない？」 「敵には言われてるかもね」 「味方からも言われてたりして」 「大きなお世話よ。で、どこの子なの」 光はポケットからメモを取り出して、涼子に差し出した。五人の名前がそこには記されていた。 「とりあえずはこの五人。でも、俺の勘だともうこれ以上は出てこない気がするね」 「どうして？一度に操るのは五人が限度だから？」 妙に説得力のある涼子の言い草に、光は苦笑しながら首を振った。 「まあそれもあるけど・・・こいつらの名前を調べてくれたやつらが、それこそ根こそぎ調べあげたからさ。あいつの目を逃れて隠れていられるやつは多分、居ないと思う」 「新宿には？」 「どこにもさ」 |