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翌日、休みの日は寝溜めしないと損だとばかりに昼過ぎまで寝ていた光が起き出して来たとき、宗佑は珍しく事務所兼居間のソファーで新聞を広げていた。 「おはよ、とーちゃん」 「おはようって時間かよ」 「起きたときの挨拶だろ」 「けっ」 宗佑は新聞をばさりと閉じて、光に差し出した。 「何さ」 「火ぃ吹いたぞ」 「・・・まじ？」 光は目を見開いて、差し出された新聞をひったくるようにして受け取った。一面トップに大きく取り上げられているのは、高校生による改造銃の密売と、発砲事件、そして暴発による事故だった。 「自損事故か」 「警官隊や周囲の人間には被害はなかったようだな」 「何でこんな大事になったのさ？」 「俺が知るかよ。大方、サツのダンナに追い回されてガキがビビッたんだろ」 宗佑は肩を竦めて見せた。そのそっけない言い方には、重症を負った子供に対する思いやりなど欠片も含まれていなかった。 「てめえで始末もつけられねえガキが、チャカなんかに手ぇ出すからだよ」 「・・・まあね」 光にも、同情してやる気など、全くない。改造銃を手にすることで自分自身が強くなったと勘違いし、そんなふざけた代物を売り捌き、警察に追い回されて怯えて見境なく発砲した挙句の果てには暴発事故で自分が大怪我を負う。誰がどう聞いても鼻で笑っておしまい、だ。 「これで街も静かになるといいね」 「なりゃいいけどな」 「まだ他にも居るって？」 「そうじゃない」 宗佑が心配しているのは、そんな表面上のことだけではなかった。 もちろん、阿呆な子供が物騒なものを振り回すだけで、周囲に被害が及ぶこともある。だが、問題は誰が、何のために、その阿呆に物騒なものを持たせたか、なのだ。 「考えてみろよ。中坊や高校生のジャリにチャカ持たせて、何しようってんだよ？組の杯交わしたわけでもない半端モンを集めて何かできると思うほど、ヤー公だってバカじゃない」 「・・・確かにね。あの手の改造銃って、値段も高くないし、あんまり割が合わないよね」 「だろ？なのに、あいつらは、高校生のガキにチャカを持たせた。何故だ？」 「でも・・・実際動いたのはあの女なんだろ？」 「だからだよ」 「え？」 「あの女を甘く見るなって言わなかったか？そりゃ、あの女は学歴も全くない、そういう意味では三流のアタマだがな、人間一匹破滅させる程度のことは軽くやってのけるぞ」 くわえた煙草の煙をふっと宙へ吐き出す。 「そこらのヤー公よりよっぽどタチが悪い。いや、・・・アタマが切れる、というべきかな。誰でも簡単にわかるようなヘマをやらかすとは思えない」 「何かたくらみがあるってこと？だけど、そんなの危険すぎる」 「光、お前忘れてないか」 宗佑の瞳が、光った。 「あの女は、『毒婦』なんだってこと」 |