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「・・・でもさ。ただ、あの女が動いたってだけで、リョーコさんまで動かないだろ？あいつにアホガキが引っ掛けられたって、別にどうってことないじゃん」 「あら、そうでもないわよ。健全な青少年が誤った道に踏み込もうとしているのを救うのは警察の立派な職務のひとつだわ」 「よっく言うよ」 「言っておきますけど、キミは別よ」 「何でさ」 「今更救いが要るほどの可愛い少年じゃないでしょ」 「ふん、クソババア」 「なんですって！」 もう少しで水割りをかぶらされるところだった宗佑は暴れる光の頭を無理矢理押さえつけて謝らせた。何しろ嶋村涼子警部補は、光が思っている以上の辣腕刑事なのだ。下手ににらまれると、今後のアソビ、もとい、身の処し方にも影響が出てしまう。 「でも、実際、光の言うとおりだろ？いくらアバズレだからって、いわば自由恋愛を禁じることまではできないし、涼子、お前だってそんなつもりは毛頭ないんだろ」 「当たり前でしょ」 涼子は艶然と微笑んだ。 ・・・やべー。 宗佑は内心、冷や汗をかいていた。涼子がこんな艶やかな笑みを浮かべれば浮かべるほど、その蟲惑的な唇からは剣呑なことが飛び出してくる。 果たして。 「香港ルートで、改造拳銃が入ってきていること、知ってるわよね？」 「拳銃って、トカレフとかなんとか、そういうヤツ？」 「惚けるのはよして。そんな暇ないのよ」 すぱっと切り捨てるように言い切った涼子の口調に、光も宗佑も、苦笑するしかなかった。 「はいはい。・・・でもさ、あんまり性能よくないんだよね、確か？」 「というより、クズね」 「暴発するかもしれないとかって」 「・・・そこまで知ってるの？」 光はしまった、という表情になったが、黙って肩を竦めただけだった。 「材質も構造も粗悪品。三発撃てれば良い方ね」 「それ、滅茶苦茶危なくねーか？よくそんなもん、売れたな？」 「日本には拳銃の携帯許可すら下りないもの。それにね、持っていることがステータスだってこともありうるでしょう？」 「・・・なるほど」 だから、光だったのか。 「で？もう、それは出回ってんの？」 「まだ大部分は隠れてるわ。でも、時間の問題ね」 「その出先が、今回はヤー公じゃないってこと？」 「ヤクザならまだマシだったわね」 重いため息を吐いた涼子。 疲れた表情が、初めて彼女の顔を覆った。 |