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夜遅くの美女の訪問。 艶めかしい響きであるはずなのに、何故こうも殺伐とした空気が流れているのだろうか。 「ねえ光クン。正直に言って欲しいんだけど」 涼子は黒く艶のある豊かな髪を無造作にかきあげた。 「キミの友達で、行方不明になっている子、いないかしら？」 「・・・行方不明？」 光は眉を寄せて、思わず隣の宗佑の顔を見上げた。もちろん、そんなところに模範解答が書いてあるはずもない。光は首を振って肩を竦めた。 「さあ、居ないと思うけど・・・俺だって、別にいちいちダチの行動を管理してるわけじゃないし」 「ってことは、そんな情報は掴んでいないと思ってかまわないわね？」 「ご随意に」 「涼子、一体何なんだ？そんなこと、わざわざ出かけてきてまで聞かなくちゃならないことか？」 「私だって暇じゃないのよ、宗佑」 涼子は足を組み替えた。形の良い白い足が覗く。 「あの女が動いたようなの」 「・・・クソアマ」 ぼそりと呟いた光の口調には、昏い怒りが潜んでいた。いつも何に対しても無関心であるかのような光には珍しい。宗佑が片眉を上げると、それに気づいた光が苦笑してみせた。 「とうちゃんは知ってるよね？あの女のこと」 「知らなきゃモグリだろ」 「何のだよ」 「えーと。新宿の遊び人の」 「自分で言うなよ」 話が逸れてしまいそうになったが、光はすぐに当初の目的を思い出して、自分で軌道修正をした。 「顔が二流なら体型も二流、アタマは三流、品性は論外」 「・・・ひでえな。的確だが」 「だけど、いつもパトロンは一流。贅沢し放題、何でも思いのまま。カラダがイイんだろうな」 「おいおい」 「何慌ててんだよ、ガキじゃあるまいし」 「お前はガキだろ」 「試さなくたって考えりゃわかるだろ。それ以外に何がある？」 「えーと・・・性格とか」 光が冷たい目で見るのはまだわかるが、何故涼子にまで小馬鹿にしたような目で見られなくてはならないのだろう。宗佑はこの世が不条理に満ち溢れているということを確信した。 「ヤー公が何しようと勝手だよ。アバズレを取り合いしようが、溺れ死のうが、知ったこっちゃない」 「だけど、彼女はそうは思わなかった」 涼子が後を引き取った。 「遊びで引っ掛けるようになったのよ。それも、中高生の子供を」 「・・・そこまで手を伸ばして来ていたのか？」 「ああ。あいつら、意気がっちゃいるけど、てんで何にも知らない、まるで阿呆だからね・・・あんな女にかかったら、終わりだよ」 天下の警視庁捜査一課の警部補の折り紙付きの「毒婦」を評する、「子供」の世界とはいえ広い範囲を手中に収めている（はず）の光の言葉。光が言うのなら、その通りなのだろう。 引っ掛けられた子供たちがどんな末路をたどったのか、考えたくもなかった。 |