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家へ帰ると、事務所兼居間には宗佑が転がっていた。 「ただいま。どしたの？」 「二日酔い」 「なに、またマージャンかよ」 「またとは何だ、またとは！」 「だってアンタ、昨日もマージャンでボロ負けして帰ってきたじゃん」 「あれは一昨日だ！」 「はいはい」 子供のような言い訳をする宗佑に、光は肩を竦めた。 「ちぇ、こんなの手ぇ出さないか」 「・・・何の話だ」 振り返ると、宗佑はいつの間にか起き上がっていた。死んだ魚のように濁らせていた目も、覇気を感じさせる光を宿している。見た目に騙されてはいけないと知っていたのに、つい油断した失態に、光は舌打ちをした。 「なんでもないよ」 「誰の話をしていたんだ」 「べつに〜」 「光」 いきなり腕を掴まれ、光はソファーへ倒れこんだ。 「・・・あっぶねーっ、ココってスプリングが飛び出してくるところだろ！」 「それはこっち」 「そういう問題じゃなくって！」 「仕様がねえだろ、直すカネないし」 「・・・もういいよ」 「よかねえよ」 宗佑の顔を見直して、光はもう一度肩を竦めた。うまく、手の内へ丸め込まれたものだ。 「結構綺麗なカオだったよ。整形美人だったけど」 「・・・会いに行ったのか」 「まさか、俺お化け屋敷はあんまり好きじゃないんだ」 ほっとため息を吐く宗佑。光はテーブルに載せてあったマグカップを取り上げた。 「そこの駅でさ。綺麗なものを壊すのが好きなんだって、変わった趣味だよね。更年期だとそうなるのかね」 「本人の前で言うなよ、絞め殺されるぞ」 「言いやしないよ、俺、紳士だもん」 「紳士が聞いてあきれるな」 「失礼な」 くすりと笑うと、光はコーヒーを飲み干して立ち上がった。 「出来れば二度と会いたくないね。父ちゃんの言うとおり、バカじゃない」 「そーか？」 「うん。周りに居た男はバカだと思ってるみたいだったけど・・・捨てられるかもしれないって思ってないんだな、あいつら」 宗佑は、笑った。 「だから、『毒婦』なんだろ？」 |