ナイン・テイラーズ







 ナイン・テイラーズって知ってるかい?
 九人の仕立屋さんだよ。九人の仕立屋さんが集まって、やっと一人分の 服を縫い上げることが出来るんだ。それくらい服っていうのは作るのが難 しい。奥が深いものなんだよ。


 あと一人。
 あと一人で、千人切りの達成だ。

 孔雀は扉を開けた。

「ナイン・テイラーズって知ってるか?」
「知ってるよ。弔鐘だよ」
「・・・知ってたのか。・・・」
「当たり前じゃないか、君は僕を何だと思っているの?」
 はい、神父様です。
「神学校に通っていた頃は、鐘綱をひいたこともあるよ。ゆっくり九告鐘、 年の数だけ、それから十二の鐘。こっちじゃうるさいとか言われて、鐘を 鳴らせないのが哀しいね」
 玉虫神父様はベータ・ゾーンでのことを懐かしそうに回想していた。
「九告鐘(ナイン・テイラーズ)かあ・・・どこでそんなこと、聞いてき ・・・あれ、孔雀?もういないや」


 教訓:千人切りは諦めた方が良い。



<終>







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