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何でこんなヤツと二人で居ないといけないんだろう。自分の不運さを呪いたい気分になる。 「・・・あの」 治安『判事』が小さな声で話しかけてきた。当然、無視だ。 「今朝はその、申し訳ありませんでした・・・」 「何でアンタが謝る」 無視だと思ったばかりなのに。思わず言葉を発してしまったことも腹が立つが、それ以上に治安『判事』が謝罪してきたのがどうにも腹が立って仕方がなかったのだ。 「アンタがあいつに命令してさせたのか」 「ま、まさか」 「じゃあアンタが謝る必要はないだろう！」 「それはそうなんですが・・・一応、使用者責任といいますか・・・」 何が使用者責任だ。人殺しに使用者責任もクソもあるか。 「大体あいつはもう子供じゃないんだろう！」 「私たちより十歳以上年上です」 「だったら！」 「・・・孔雀は悪いとは思ってないんです・・・」 治安『判事』は顔色の悪い、白い顔を伏せた。 「アルファ・ゾーンへ強制的な移界をさせられてから、大分性向が変わったらしくて・・・根本的には変わっていないんですが、・・・」 「マジメにあんなことをやったというのか？！」 「お言葉ですが・・・かなりましな方です」 こいつ、私をバカにするのか。頭に血が上ったが、治安『判事』の顔を見て、戸惑った。本当に、治安『判事』は真面目に言っていたのだ。 「一昨日、治安『法廷』が機能停止したのは御存知ですよね」 「もちろん知って・・・まさか、あれは『冥王』のせいだとでも？」 「スプリンクラーが誤作動を起こして水浸しになりました。無事だったのは監察爆弾のコンソールだけです」 「・・・」 「悪意のない、子供みたいなものなんです」 「・・・」 「子供相手にまともに腹を立てていては身が持ちません。ですから、・・・」 私が口を開こうとしたとき、扉が開いた。 「翡翠、翡翠、月見しよう！」 「・・・なんで君はこうタイミングの悪いときに来るかなあ・・・」 「何でだ！さっきまで曇ってたのに、今晴れてるんだぞ！綺麗だぞ、すぐ来い！」 「ちょ、ちょっと待ってよ、まだ仕事が・・・」 「うるさい！仕事が何だ！月見だ月見だ！」 大騒ぎする台風のような一陣の風が通り過ぎていった。 今のは一体なんだったんだ・・・ふと気づいて窓の外を見ると、白い、静かな月が中空にぽつりと存在していた。 「そういえば・・・今日は中秋の名月だって言っていたな・・・」 下を見れば、治安『判事』と『冥王』が居た。一升瓶らしいものを振り回している『冥王』と、それに付き合って（付き合わされて？）いる治安『判事』。 子供みたいなもの？みたいな、というよりは子供そのものではないか。アレが本当に、『冥王』なのか・・・。 答えの出ない問いを抱えた新人『判事』を、白い月が黙って照らしていた。 |