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絶対大丈夫。 千歳はぎゅっと胸元を掴んだ。 いつもいつも、生きて帰ることが出来るとは限らない、命の保証のない仕事。相手はこちらを殺すつもりでいるけれど、千歳は可能な限り、生かして相手を捕らえなければならない。生かして捕らえて、裁判を受けさせて、贖罪をさせて。 それでも、刑務所から出てきた受刑者のうち、九割以上の人間が元の「仕事」に手を染める。そうしなければ生きていけないのはわかるけれど。スラムで育った千歳にとって、「追う者」と「追われる者」、どちらになるかはほんの偶然の結果でしかなかったのだけれど。 絶対大丈夫。 怖くないわけがない。痛くないわけがない。死なないわけがない。 ただの「人間」なのだから、殴られれば痛いし、撃たれれば血が流れるし、いずれは死ぬ。十年後かもしれない、五年後かもしれない、一瞬後かもしれない。身近にある「死」が急に自分のものになることも、全く不思議なことではない。 それでも。 「…絶対大丈夫」 そこにあるのは小さな縫い取り。所属を示す、小さな、徽章代わりの刺繍。 一人で戦うことが殆どで、滅多にチームで動くことはないけれど、だからこそ強く存在する連帯感。いつも一人だけれど、でも、決して一人きりではない、そこに「帰る場所」が在ることを教えてくれる、千歳にとっての、皆にとっての「お守り」。 「帰らなきゃ」 大丈夫。「お守り」があるから、絶対に大丈夫。 勝機は必ず、見出せる。 「…破れなきゃ、もっと心強いんだけどなー…」 今日も無事で帰ってこられたことに感謝しながら、見事なかぎ裂きのできた「お守り」を修繕する千歳だった。 |