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「治安『判事』の命を狙った」 それは『ガーディアン』たちにとって、正式な指令無しに相手を殺すことが出来る、本の数少ない例外であり、絶好のチャンスでもある。だから、彼らはそんな場面に出くわせば、舌なめずりせんばかりに目を光らせ、犯罪者たちの前に立ちはだかる。 その目は、世界中の誰にも、理解出来ない光に溢れている。 「治安『判事』の命を狙った」 孔雀が笑って、火焔呪を召喚した。 畏界の焔の色に目を奪われない人間は、居ない。あの治安『判事』ですら、時折魂を奪われたように、孔雀を見つめている。 でも。 「…孔雀」 治安『判事』を狙った男が無事逮捕され、治安『判事』が孔雀と離れた隙を逃さず、私は孔雀に話し掛けた。 「なんだよ、葉っぱ？」 「孔雀、君は暴れるのと、火焔呪で人を灼き殺すのと、どっちが好きなんだ？」 不思議そうに孔雀は首をかしげて、私を見た。 「…別にどっちでもいーじゃん？」 「ああ、もちろん構わない、治安『判事』の命を狙う人間に対して処刑する権利が『ガーディアン』に与えられている。…ただ、ちょっと、不思議で」 「何が？」 「君は火焔呪を呼んでいる時より、犯罪者と格闘したり、暴れているときの方が生き生きしているように見えるから」 「…そっか？俺はどっちかっつーと」 ちらりと翡翠を見て、遠くにいて声が届かないことを確認してから、孔雀は私に肩を竦めて見せた。 「めんどくせ」 「何が？」 「あいつが狙われなきゃ済むことじゃん？」 「…そりゃまあそうなんだけど…」 でも、孔雀。 治安『判事』が命を狙われない限り、誰をも憚らない大暴れが出来、人を------犯罪者を殺すことはできないのだけれど。 「疲れるしさあ、腹減るしさあ」 「あれだけ飲み食いしておいてか？」 「だから喰ってんじゃん」 孔雀は、もしかしたら、人を殺すことが出来ようが出来まいが、どちらでも良いのかもしれない。 ただ、その身内に巣食う、強烈な「殺人衝動」さえ目を覚まさなければ。 「腹減ったー」 「…だからさっきあんなに食べたばかりだろう…！」
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