静まり返った夜の『法廷』。正月も何も無い、毎日繰り返される日常。コーヒーを入れて戻ってきた翡翠の後から、孔雀が入ってきた。 「・・・どうしたの?そんな大荷物抱えて」 「お袋の買い物に付き合わされた」 「・・・」 「祝」の文字や門松のイラストの入った袋を抱えているところをみると、年明け初売りバーゲンの荷物持ちとして借り出されたのだろう。疲れた顔で、袋を一つ、翡翠に突きつけた。 「じゃ」 「ちょ、ちょっと待ってよ、こんなの渡されても・・・」 「いんだよ、お前のなんだから」 「え?」 慌てて袋を開けると、中には枕とジャージ、その他保存食品が詰め込まれていた。 「何でこれが僕の?」 「お前のなんだよ」 「君のと間違えてない?」 「俺のはこれだよ」 中には全く同じ、枕とジャージ、その他保存食品。違うのは、生鮮食品が入っていることだけ。 「・・・何で?」 「タイムバーゲンで、二個セットで売ってたんだよ」 「でも、どうして僕に」 「実家は俺を入れても三人なんだよ。二個ずつ買ったら一つ多いだろ。それがお前のなんだよ」 いくら「余った」とはいえ、それを他人にくれてやっていては、かえって高くつくのではないだろうか。翡翠がそれを指摘しようとすると、孔雀は疲れた顔で大きなあくびをした。 「お袋にとっちゃお前も面倒見る子供の一人に入ってんだろ。んじゃな」 「ちょ、ちょっと孔雀・・・!」 ひきとめようとしても、相当に疲れているらしい孔雀を引き止めることは出来なかった。どうやらアルファ・ゾーンの母親に、引きずりまわされたようだ。 「・・・何だか、複雑・・・」 随分前に両親と死別してしまった翡翠には、まるで本当の親のように接してくれる宮内夫妻の心遣いがありがたかったが、・・・孔雀とまとめて「子ども扱い」というのも、ひっかかるのだが・・・。 「ま・・・いいか」 いくらセットバーゲンとはいえ、色まで全く同じものを買わなくてもよかろうにと思ったことは、気にしないことにしよう。 翡翠は肩を竦めたのだった。 |
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