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「質問者からのご指名により、『警察庁』人事部の揚羽に回答してもらうことになりました」 「ダメ男？・・・全員ダメだな」 「そ、そんな。もうちょっと具体的に・・・」 「では、仕事が出来ないヤツ」 「でも、『警察庁』で優秀な人材はたくさん揃っているじゃないか」 「どこに」 「た、たとえば、千歳三等巡察官とか。本部でも特に優秀な人材の一人に数えられていると聞いたよ」 「空港は抜けているところがあるからダメだ」 「抜けて・・・って、どこが？」 「お前、アイツラの作った書類を一度でも見たことがあるか？」 「いや、ない・・・かな」 「一度でも提出を受けてみろ、逆吊りにして蹴り回してやりたくなるぞ」 「・・・（←噂には聞き及んでいたらしい）じゃあ・・・同じ人事部とか、そういう事務方は？彼らなら、君と肌合いが似ていそうだけど」 「ほう。お前は私はそういう人間だと思っているのか？」 「そ、そういうって、どんな」 「前の人事課長を知っているか」 はい、重々存じ上げております。 翡翠は黙って頷いた。前任の人事課長は胃潰瘍で入院し、そのまま本人の意思及び医師からの指示で、地方分署へ出向することになったのだが、・・・その病気の原因が、口先ばかり達者でロクに仕事の出来ない上司に業を煮やした揚羽の苛烈な追求であった、と密かに噂されているのは周知の事実だった。 「それに、プライドが高すぎるのも問題だな。それ自体は結構だが、見合うだけのことをしてもらいたいものだ」 「じゃあ、・・・ダメな男ではなく、君が及第点を出せるのは兄上だけかい？」 揚羽は少しむっとしたようだったが、すぐに首を振った。 「いや、そうでもない。お前なんかは結構惜しいな」 「おや、そうかい？僕は君に真っ先にダメだと言われると思ったけれど」 「お前は体が弱いからな。それさえクリアすれば、お前自身は仕事は出来るし、腹黒いくらいにしたたかだからな」 「褒めてないだろう、それは」 翡翠も少しむっとした表情になったが、否定しなかったところをみると、大なり小なり身に覚えはあるらしい。が、ふと翡翠は首を傾げた。 「僕自身は、ってどういう意味だい」 「お前には貧乏神が付いているからだ」 「・・・孔雀は別に僕の家族でも何でもないから」 「そうか？『冥王』はお前の兄弟分だと思っている人間は多いようだが？」 「今度訂正文書をだしておくことにするよ」 うんざりしたように言った翡翠は、溜息をついた。 「話を戻すけど。・・・君の男性に対する見方って、ちょっと矛盾してるよね」 「何故だ」 「多分、決断力があって、自分というものを確立していて、流されない、そんな人が良いわけだろう？」 「まあそうだな」 「それは自己中心的な人間になり得るよ。でも、そういうのは我慢できないだろう？」 「私の言うことをきけば良いだけの話だ」 「・・・それは部下って言うよ、普通・・・」 尻に敷くための存在だろう、と言わなかっただけ、翡翠は頭が良かったといえるだろう。あえて今回は無理矢理用事をひねり出して同席しなかった孔雀は賢明だったかもしれない。 「しかしこの質問は難しいな。普段、あまり男だの女だのという意識をしていないからだろうな」 「そうかもしれないね」 結論。 揚羽にとってのダメ男とは、「使えないヤツ」ということのようだ。 |
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