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「お前は何でメシ喰うんだよ！」 びりびりびり。 『法廷』食堂の窓が震える。何事かと振り返る人々の目に映ったのは、長い黒髪を無造作に後で束ねている小柄な少年と、同じく小柄で華奢な治安『判事』。きょとんとした顔をして少年を見上げている治安『判事』と、ぷりぷり怒りながら大声でわめきたてている少年。広い食堂の窓が大音声で震えるほどの音量をマイク無しでキープできるというのは見上げたものである。役者か歌手になったとしても、「喉を潰す」ということは絶対に無いだろうと思われる程の声だった。 「…何でご飯を食べたら君に怒られなきゃならないんだ？」 「俺もメシ食おうと思ってたのに！」 「勝手に食べたらいいじゃないか。大体、僕がきちんと食事をしない、って怒るのは君だぞ」 「るさい、俺の居ないところで勝手に食うなって言ってるんだ！」 「何で君にいちいち断らなきゃならないんだ？！」 「俺だってメシ食いたいだろ！」 「食べたらいいじゃないか！君と一緒じゃなきゃ悪いとでも言うのか？！」 「悪いっ！」 ああいえばこう切り返してくる、と全『法廷』でもトップクラスの論客である治安『判事』が、咄嗟に切り替えせずに言葉に詰まった。その隙に、…という意識も無い様子で、少年がさらに言い募った。 「ツケだとおばちゃんが忘れるから、なるべく食券買えって言うんだ。お前と一緒でないと食券買えないだろ」 「…そうだね」 「俺、日替わり定食とうどん定食とカレーとざる蕎麦とオムライスとスパゲティとミートドリアが喰いたい」 ぐい、と差し出される手に、治安『判事』は力なく言った。 「これだけあったら足りる？…」 「足りない。あと一枚」 さらに紙幣が一枚、追加された。少年はそれをさも当然であると言わんばかりに受け取ると、配膳口に張り出されている紙を指差した。 「今日のデザートはチーズケーキだって！お前にも買ってきてやるよ」 「ありがとう、嬉しいよ、孔雀…」 「おー、俺は親切だからな！」 そんな親切は要らないから。 それよりも、君の食べるものを聞いていたら胸が一杯になって気分が悪くなってきたんだけど……。 孔雀に聞こえない、小さな声でぽそりと呟く治安『判事』の悲劇は、未だ終わらない。 |