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愛している。 君を愛している。 でも、どうしてだろう、隣に君は居るのに、すぐ傍に居るというのに、君と一緒に居るという実感がない。 君も、僕を愛していると言ってくれているのに。 もう、結婚の約束もしたのに。 婚約指輪も、値段こそ大したものではなかったけれど、全てを叩いて買った。それを君は泣きながら受け取ってくれたのに。 「絶対に、絶対に、ずっと一緒よ」 そう言いながら僕に縋りつくように抱きついた君。 ずっとそばにいるから。 二人で、いつもそう囁きあっていたのに。 愛している。 愛している。 君を愛している。 でも、君が居ない。 なぜ？ いつも一緒だと約束したのに、ずっと、ずっと、死ぬまで一緒だと約束したのに。 ずっとそばにいるから。 ずっと、ずっと、ずっと、そばに…… 狭綾、なぜ、君は居ないの？ そばにいてくれると、言ったのに。 あんなに、二人で約束したのに。 君は何処に居るの？ 君は何処に居るの？ どこに？ なぜ、君は居ないの？ 「ずっとそばにいるから。」 耳元に聞こえてきたのは、君の声じゃない。 聞きたかった、ずっと探している君の声じゃない。 でも。 「ずっと、そばにいるから。だから、寝ろ」 「でも…」 「デモもカモもイカもない。寝ろ。寝てろ」 聞こえる声は、君の声じゃない。 でも、何故だろう。 どうして、安心するんだろう。 「ほんと…に…？」 「ああ、ずっとそばにいるから。」 「ほん…と…」 「ずっとそばにいるから。」 誰の声か、思い出せない。 君の声じゃないことはわかるのに。 でも、もう少しで、思い出せる…… 「寝ろ、翡翠」 「…うん…」 酷い熱で、もう少しであの世へ渡りかけたらしい、と聞いたのは目が覚めて、二日ほどしてから。 惜しかったな、と意地の悪い笑いで、思ったより優しく僕の髪を梳いたあの声の主。 「…僕は、何か、言った？…」 「さあ？」 そういって、彼は肩を竦めた。 「通帳と印鑑の在り処を吐かなかったことだけは絶対確かだ」 「…誰が言うもんか…」 よりによって君なんかに、というと、彼はただ、笑った。 |