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「俺とお前は友達だよな？」 「ええ」 志野は頷いた。 何故なら、以前に「握手をしたから」。 友達だから握手をしたのか、握手をしたから友達になったのか、詳しいところは当人の志野にもはっきりとはわからないのだが、孔雀と「友達である」とたった一度でも認めたのは志野自身である。 「有効期間は？」 「えっと、来年の三月ですからまだまだ大丈夫ですよ」 「誰が鰹節の話をしてんだ」 「え、だって」 丁度手に取った時に訊ねられたら、そしてそれが食品だったら、そのものの賞味期限を訊ねられていると思うのが普通ではないか。 「違うんですか？」 「お前は鰹節とも友達なのか」 「あ、その話の・・・って、友達の有効期間なんかないでしょうに」 「でもよく女の子が言うじゃん、私たちずーっと友達よ、って。まあ大抵すぐ裏切ったり裏切られたりするんだけど」 「うーん・・・でも、期限なんてやっぱりないものだと思いますけど。人の想いはそうそう自在に切ったり捨てたり出来るものじゃありませんしね」 視界の隅に映る、アップライトのピアノ。 簡単に捨てられるくらいなら、・・・・・ 「・・・え、孔雀さん、何か今仰いました？」 ほんの短い間だったが、深い想いにとらわれていた志野は、その間に何か言った孔雀に訊ね返した。 「じゃあ俺とお前の有効期限は無しだな、って」 「無しって、ずーっと友達ってことですか？」 「永遠に・・・な」 「ずっと友達よね」と同義の言葉のはずなのに、何故か重い運命の枷を填められたような気になるのは何故なのか。ほんの気の迷いだろうか。 志野はピアノをぼんやり眺めながら、やはり気持ちは簡単に変えられるかも、ああいやでもでも、と思い悩むのだった。 |