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雨がしとしとと降っている。 こんな日は、誰も外に出たくない。巡察官も、一般市民も、ーーーそして、犯罪者たちも。 珍しく巡察部室でダラダラ・・・いや待機中だった千歳は窓に貼り付き、陰鬱な声で呟いた。 「あーめあーめふーれふーれもーっとふれー」 「お通夜みたいな声で歌うのはやめろッ」 同じく待機中だった但馬が千歳の後頭部を叩くと、ごちん、と千歳の頭とガラスが痛そうな音を立てた。 「痛いなあ、ガラスが割れたらどうすんだよっ」 「いくらお前が石頭でも、百万回くらいぶつけたって割れるようなヤワなガラスは入れてない、心配すんな」 「こら、空港、うるさいぞ！」 書類に埋もれるように座っていたため、二人がうっかり在室を忘れていた巡察部長が机の向こうから怒鳴った。 「・・・すみません」 「何だ千歳、元気がないな」 部長は立ち上がったらしいが、書類の向こうに見える部長の割合は大して大きくない。 「そんな様子じゃあ、とても二課選抜には耐えられんぞ」 「いいんです、どーせ今回も落ちましたからッ」 「何故？」 「自己採点しましたけど、全然合格ラインに足りてなかったですから」 「そうなのか？」 「そうなんです」 机と一体化している千歳を見た部長は、千歳と但馬の二人をかわるがわる見比べて、言った。 「試練はもうすぐ来るぞー」 「止めて下さいよ、移界命令でも出たらどうするんですか」 「部長は乾いたところでぬくぬくしていられるんでしょうけどさー」 「何を言うか」 にやにや笑う部長の顔。 そこに、あんなヒミツが隠されていたとは。 確かに千歳は試験には落ちたが、日頃の勤務成績優秀者として、高等第二課選抜訓練に選ばれていた。但馬と共に。 「・・・内定来てたの、あの雨の日の三日前だとさ」 「タヌキめ・・・」 |