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「卑怯者！」 怒鳴り声が聞こえたと同時に執務室の扉が蹴破られたように開き、目の前を孔雀が駆け抜けていった。 「あの色つき雀、また勝手に『判事』様のお部屋に・・・！」 『法廷』事務官、春菜が一言も文句を言えない程の勢いだったが、春菜はなおもぶつぶつ文句を言いながら扉をノックした。 「どうぞ」 いつもと変わらない治安『判事』の声。ほっとした春菜は失礼します、と声をかけて中へ入った。 いつもの声は声だったが、『判事』は不思議そうに首を傾げ、きょとんとした顔をしている。 「先ほど孔雀が来ていたようですが」 「え？ええ、そうなんですけど・・・」 「卑怯者！とか怒鳴っていましたけれど」 「ええ、孔雀に訊ねられたことを普通に答えただけなんですけど・・・」 「だってさ、既視感は有名だけどさ！」 苦笑して目玉焼きを焼かされているのはカクテルバー「カラーズ」の店主、志野。 「そりゃ、翡翠さんなら未視感（メジャヴュ）くらいの言葉、ご存じでしょうに」 「・・・お前も知ってんの？」 「はあ、大学で仏文を専攻しましたし・・・」 「お前もか、卑怯者！」 「や、あの、卑怯とかそういうんじゃ・・・」 「俺はもう誰も信じねーぞ！」 酒も飲まずにクダを巻けるのは孔雀さんの得意技の一つだよな、と思いつつ、何故か当然のようにトーストも要求される志野だった。 |