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「汚え・・・」 「君に言われるのは心外だね」 「でも弱みを握ってそれで相手に言うことをきかせるのって、汚えじゃんかよ」 「君が殺人鬼だからいけないんだよ。そうだろう」 「何で」 「何故って、君が好き勝手に誰かに殺されずに済む権利は、他の人にも同じようにあるんだって考えたことはないのかい」 「ない」 「・・・いや、あのね」 「じゃあ金持ちのヤツが好き勝手に飲み食いできる権利はあるのに、何で俺にはそれがないんだ」 「君がお金を持ってないからだろ」 「俺がそいつらと同じように大金を持つ権利はどうなるんだ」 「権利はあるよ。ただ、機会がないだけで」 「じゃ他のヤツも俺みたいに他人を好き勝手に殺す機会がないだけじゃねーか」 「それは違うよ。刑法によって他人を自由に殺す権利は認められていないけれど、君がお金持ちになることを認めていない条項なんかないからね」 「・・・探せばあるだろ」 「あるわけないだろ！」 翡翠は思わず大声を出したが、すぐに冷静な声に戻って言った。 「何だか話が随分逸れてしまったけれど。『大法廷』へこの書類を持っていってくれ」 「だって大『判事』のジジイ、俺を見るとイヤな顔すんだもん」 「君だってイヤな顔をし返せばいいだろう」 「・・・それはみとめられてんのか？」 「特に禁じられてはいないね」 「じゃ、行ってくる」 孔雀は封筒を持ってしぶしぶ出かけていき、翡翠は溜息を吐いて椅子にもたれ、時計を見た。 五分。 「・・・自分で行った方が早かった・・・」 |