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口にすることで現実となってしまうもの。 口にしたことで実存のものとなり、動き出してしまうもの。 「言葉」が「現実」となる。 それが、言葉の力。 それが、「言霊」。 「誰にも言わないで」 不意に、孔雀が呟いた。 「…何？」 「お前、そういわれたら、誰にも言わずに自分の胸にしまっておけるか？」 翡翠は小さく首を傾げ、孔雀を見つめた後頷いた。 「犯罪行為の隠蔽ならそうもいかないけれどね。個人的なことだったら、誰にも言わないよ」 「誰にも言わないで、って言葉は、本当は逆に誰かに言って欲しいって意味だと思わないか？」 「…それはどうかな。もしかしたら誰かに喋られてしまう、とは思うかもしれないけれど、漏れるかもしれないって事と触れ回って欲しい、ってこととは違うよ」 「話した相手にも絶対に言って欲しくないのなら、自分が墓まで持っていけばいいだろ？相手もそうしてくれる保証もないのに喋るってことは、逆に喋られても構わない、むしろ喋って欲しいってことだろ」 「そんなことはないよ。二人きりの秘密ってことだってあるだろ？あるグループ内では話されることはあっても外に出ることがないなら、それは秘密が守られているってことだろう？」 「なら、特定の二人の間で話されるだけなら、秘密は守られている、と？」 「そう思うよ」 「じゃあさ」 孔雀は濃蒼の瞳で翡翠を見つめた。 「俺が誰にも言わないで、って言ってお前に秘密を言ったら、お前は誰にも言わないのか？」 「誰にも言わない、って約束したらね。それが『約束』であり、言霊の一番基本のところじゃないのかな。言葉にすることで秘密は形になり、約束が形になる」 「じゃあさ」 再び、孔雀が言った。 「何でお前はすぐお袋に俺のこと言いつけるんだよ？」 「だって言わないって約束してないし」 「約束してなかったら誰にでもぺらぺら喋るのかお前はー！」 「誰にでもじゃないよ、母上にしか言いつけてない」 「一番悪いじゃねーか！」 |