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「生きる意味なんてない」 孔雀が睨みつけながら、そう言った。 「お前はここで死ね」 「・・・君はファシストだったのか？知らなかったよ」 翡翠が肩を竦める。じろっと翡翠を睨みつけた孔雀は、首を振った。 「違う。俺は全てを否定しようとは思わない。・・・だけど、これだけは別だ。絶対に、息の根を止めてみせる」 「今ここで殺したとしても、また別のものが出てくるだけだよ」 「そんなことはわかってる。・・・それでも、殺らなきゃダメなんだ」 「何があっても殺すつもりなんじゃないか。それなら、最初から理屈なんかつけずに、素直に殺したいから殺すんだ、って言えば良い」 「どう言おうが俺の勝手だ」 「確かに。でも、殺される側の身に立ってみたことがあるのかい？」 「どうして俺が！」 「君の見方は余りにも一面的だ。自分の認めるものしか存在を許そうとしない」 「俺はそこまで了見が狭いわけじゃない」 「そうかな？君は、君の気に入らないものを殺そうとする。その判断はあくまでも君の立場からのものだ。相手のことを全く考えていない」 「・・・全てのものと同じ立場に立つことなんて、現実的には不可能だ。お前は絶対に実現できない理想を他人に押し付けているだけだ」 「そう、確かに理想論かもしれない。でも、少しでも理想に近づくための努力は惜しむべきではないと思わないのかい」 「時間の無駄だ。お前の求めているものは、宗教の世界で得ることだ」 「宗教？僕は御伽噺に理想を求めたりはしない」 「現実離れした理想論は宗教よりも宗教に近いとは思わないのか」 「御伽噺のまま放置しておくなら理想は宗教と言えるね。でも、」 「・・・あああああッ、お前がゴチャゴチャ言うから逃がしただろーがぁぁ！！」 「冬でもゴキブリって出るんだねえ」 「ゴキブリを一匹見たら百匹居ると思えって名言を知らんのかぁ、お前はァーーッッ！！」 「大丈夫だよ、君の家に食べるものなんてロクにないじゃない」 「バカヤローッ、お前はアレに触られたことがないからそんなことが言えるんだー！！」 「触るなんて、人間じゃあるまいし・・・あ、出てきたよ」 「ナニ？！よしッ、キサマ、そこを動くなー！！」 丸めた新聞紙でそこらじゅうをバシバシ叩きまわっている孔雀を眺めながら、火焔呪で灼けば早いのに・・・と思いながらも忠告してやらない、ちょっとだけ意地悪な翡翠だった。 |