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はらはらはらはらはら。 ルカの大きな目から大粒の涙が零れ落ちる。マリアは怒鳴った。 「泣くな！」 「泣いてるんじゃありません。涙が出てくるんです」 「それを泣くって言うんだっ」 「違いますっ、だってこれは泣きたくて泣いてるんじゃないんですから！」 「お前の意思なんか関係なく泣けるときだってあるだろう！」 「マリアさん、矛盾してま」 ごん、と鈍い音がしてるかの声が消えたところをみると、マリア自身、矛盾したことを言ったという自覚だけはあるようだ。ルカは新しい涙を流しながら、ぐす、とすすり上げた。 「ああ、でも今年の花粉は酷いです」 「ふん、現代病患者め」 「仕方ないです、免疫系が過剰反応するのは」 「あたしなんか何ともないけどな」 「無い方がラクで良いですよ。薬は呑まなきゃならないし、涙は出るし、マリアさんには殴られるし」 「知ってるか？ハラん中に寄生虫が湧いてるヤツは花粉アレルギーなんかにならないんだと」 「どうしてですか？」 「宿主に自身を異物と認識させないために、免疫系に働きかけるらしい。太らないし、かといって死ぬほど痩せやしないし。共生してる、ってことらしいな」 ルカは充血した目でしげしげとマリアを見つめ、そして晴れ晴れとした顔で言った。 「そうか、だからマリアさんはスタイルも良いんですね！」 ゴス、と鈍い音がしたあと、随分と長い間、ルカの声が聞こえてくることはなかった。 |