|
『警察庁』との合同ランキング会議を終えて会議室を出たら、そこに孔雀が居た。 「約束だ！」 孔雀は翡翠の手首を掴むと、たまたま翡翠の隣に居た揚羽に向かって叫んだ。 「翡翠はもらって行くぞ！」 「・・・お前と何かを約束した覚えはないが」 「しらばっくれる気か！」 揚羽は面倒くさそうに肩を竦めた。 「知らんものは知らん。持って行きたきゃ勝手に持って行け」 「良いんだな？」 「やかましい、とっとと持って帰れ、お前にやる」 当人の意向を余所に、勝手に譲渡の交渉をされていた翡翠が口を開きかけると、孔雀がくるりと振り向いて言った。 「おいお前、友達はもうちょっと選んだ方が良いぞ」 「翡翠に選ぶ程友達は居ないだろう」 「ああそうか」 「・・・君たち、本気で失礼だな」 「だってそーなんだろ？」 翡翠は口を噤むと、孔雀と揚羽を交互に見比べて、溜息を吐いた。 「なるほど、友達を選べなかった結果が君たちというわけか」 「ちょっと待て！何で俺がチョウチョと同じ扱いなんだ！」 「何で私がこのクソ鳥と同列に論じられなければならんのだ」 何で、も何も、さっきから反応が同じじゃないか。そう言いたくてたまらなかったが、これ以上火に油を注ぐような結果になっても後が面倒だと悟っている翡翠は、さっさと話を変えた。 「ところで、約束ってなに」 「何が？」 「何って、約束だから僕を連れていくとか何とか言ってたじゃないか。言っておくけど、僕だって君と何か約束をしていた覚えはないよ」 「俺だってねえよ」 「は？」 「てゆーか俺さ、腹減ったから来たんだけど」 孔雀が何を言わんとしているのか、聡い翡翠が気付かないはずがない。いや、孔雀の行動パターンなど、たかが知れている。『ガーディアン』として動いている時ならばまだしも、平時の孔雀の思考を読むことなど、翡翠にとっては朝飯前のことだ。 だが、明らかに翡翠の本能が全身全霊を以て拒絶している現実を、揚羽があっさりと抉り出し、突きつけて見せた。 「翡翠より財布が目当てだったのか」 「や、翡翠付きでも良いけどな。こいつが財布を手放すわけないし」 「・・・僕は財布の付属品かい・・・」 「違うだろう、財布の付属品ならあれこれ口出ししないだろうしな」 「財布についてる鈴の方がよっぽど使えるしよ」 ・・・やっぱり、友達は選ぼう。 翡翠はそっと一人、胸に誓うのだった。 |