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新聞やニュースで、入学試験に関連するものが増えてきた。センター試験や私立大学出願など、まだ時期的に早いものもあったが、二月中旬といえば、高校入試がある時期だ。東城宗佑は、コーラの栓を開けている息子に視線を向けた。 「何さ」 「いや、お前、来年は受験生だなって思って」 「そうだよ。今更何言ってんだよ、この間それでわざわざガッコまで来たんじゃん」 「それくらい覚えてるよ、失礼な。・・・そうじゃなくてさ、お前、どんなところへ行くのかなって思ってさ」 「近所へ行くさ」 「近所って」 「歩いて、もしくは自転車通学で通えるところって意味」 光は以前、電車通学をしていた時分に、男を狙った痴漢に遭遇したことがあった。調子に乗って宗佑がからかっていじめたおかげで、すっかり電車嫌いになってしまったのだ。だが、それ以前に、光が電車通学を嫌うのは案外と面倒くさいものだから、らしい。確かに、この家と最寄り駅とは、歩いても十五分は掛かるし、自転車を置く場所もないし、定期代は掛かるし、とあまりメリットはなさそうだ。 「電車の中で可愛い娘と知り合いになれるチャンスがあるかもしれないのに？」 「面倒くさい」 「お前、若いのにじじむさいねー」 「アンタ、いい年していつまでもガキみたいだねー」 「ほっとけ」 齢十四にして達観したようなことを言う若年寄はマシだ。そう言おうとして、宗佑はふと気づいた。 「・・・歩いていけるところって、付属しかないじゃん」 名前はよく覚えていないが、有名私立大学の付属高校で、レベルは抜群に良いが授業料も抜群だったはずだ。光が「行きたい」と言うところへ行かせてやりたいとは思うが、ものには限度というものもある。特待生になるか奨学金でもとってもらうかしないと、とても宗佑の稼ぎでは通わせてはやれない。 「なんでだよ、もう一つあるだろ」 「・・・え、成宮学園？」 「あそこなら公立だし、歩いて通えるし」 「でもお前、成宮ったら都立でもトップ校だろ。予備校でも通う気か？」 「冗談」 光は肩を竦めた。 「そんな面倒なことしないよ」 「脅迫とか？」 「とーちゃん、息子の成績くらい知っとけよな。俺、成宮の合格判定はＡだぜ」 「うそ！お前、そんなに頭いいの？！」 光の、余裕のある笑みが、憎らしかった。 「とーちゃん、首括らなくてもいいから安心しなよ」 「・・・ありがとよ・・・」 頭の良すぎる息子も、考え物だ。 |