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黄色で点滅している時は、「注意しながら進行」で、赤色で点滅している時は「徐行して進行」だっけ。 翡翠は自分が運転免許を持っていないのに、何故こんなに道路交通法に詳しくなったのだろう、と不思議に思いたかった。 「…雨、止まないね」 「雨の日って、事故率が高いんだぞ」 まあ、そうなんだけど。 スリップしやすいし、視界が悪くなって歩行者や対向車、自転車に気付くのが遅れがちになるからなんだけど。 …でも、こんなにゆっくり走っていたら、スリップもしないだろうし、こんな夜明け前の時間に歩行者もそうそういないし、対向車も自転車も居ないんじゃないかと思うんだけど。 「いつ事故に遭っても不思議じゃないからな」 「まあね」 「覚悟しろよ、自分」 …っていうかね…事故に遭うのは超初心者ドライバー孔雀ではなく、事故現場に出会うという意味で「会う」んじゃないかな、と翡翠は思ったが、黙っていた。一応、事故を誘発するほどトロトロ走っているわけでもないし、低速の孔雀の車を鬱陶しく思って追い越していくような「後続車」そのものが存在しない現在、孔雀の好きに走らせてもいいのではないかと思ったから。 「…ねえ、孔雀？」 「何だ」 「君、カニ以外の魚介類も好きだったんだね」 「好きだよ」 夜中に車を走らせて、漁港へ出かけていって、水揚げされたばかりのエビとイカを分けてもらいに行くほどに。 「まあ半分はユタが店で使うって言うから、なんだけどな」 アルバイト先のイタリアン・レストランの仕込みもかねているとはいえ、「タダで食わせてやる」と言われて黙って聞き流すような孔雀ではない。いつもは自分で足を運んでいる店長の都合が悪くなったのを代わって行ってやるのも良いことだと思うし、タダ云々の話がなかったとしても、孔雀はこの話を断らなかっただろう。 だが。 「…何で僕もつき合わされてるのかなあ…」 「何か言ったか」 「別に…」 「横でウダウダ言うな、気が散る！」 直線なんですけど。 幹線道路に入って、全然歩行者が飛び出してくるような心配も、無法自転車が走っている心配も全然ない、居眠りしながらでも走れるような、とても走りやすい道なんですけど。 翡翠は溜息をついて、遠くに瞬く黄色い点滅信号を眺めるのだった。 |