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ぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽり。 「・・・ねえ孔雀」 「あ？」 ひょこ、と孔雀が頭を上げるとぽりぽりという音が消え、辺りに静寂が広がった。世界はこんなにも静かなものなのか、と改めて認識できるほどに。 「よく食べるね」 「たかがチョコじゃん」 「チョコだから、だろう？」 孔雀は甘いものがとても好きだ。コーヒーを砂糖飽和溶液に変えるだけでは飽き足らず、洋菓子から和菓子まで、およそ好き嫌いという行為、概念の存在を憎んでいるのかと思えてくるほどに、全てのものを食べつくそうとする。 「別に？俺、チョコでなくても食うよ」 「そりゃ食べるだろうけど」 翡翠は少し孔雀の顔を見つめていたが、また口を開いた。 「あのね、孔雀」 「何だよ」 「食べるのは別に良いんだけど、もうちょっと静かに食べてくれないかな」 周囲の人々------『法廷』食堂にたまたま居合わせた人々------は皆イヤな顔をして二人をみている。翡翠が命じて騒音を立てさせているわけでもないのに、何故か人々は孔雀よりも翡翠をより強く睨む。 「何で？」 「うるさいから」 「いーじゃん」 良かないよ。 理屈も何もあったものではない。翡翠は溜息を吐くと、言った。 「僕も少し食べて良い？」 「後でまた買ってくれるんならな」 元はといえば、翡翠の金で買ったチョコレートだというのに、何故こんなにも恩着せがましく言われなければならないのだろうか。 「また買ってあげるから」 「じゃ喰っても良い」 ぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽり。 「・・・ねえ孔雀」 「あ？」 「人工着色料って、怖くない？」 翡翠の視線が孔雀の手元に落ちていた。色とりどりのおもちゃのように、ピカピカ光るマーブルチョコレート。 「何で？」 「だってさ、ほら」 ぺろりと出して見せた翡翠の舌は、見事なまでのメロン色だった。 「・・・ごちそーさま」 チョコレートから興味を失った孔雀が席を立っていった。あとに残されたのは、翡翠に食べられて緑色だけがなくなったマーブルチョコレートと、翡翠。 やっと静かになった食堂で、翡翠は小さなチョコレートを摘んだ。 「・・・色が違っても味も変わるわけじゃないんだな」 |